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株式会社 森上教育研究所 公立中高一貫校 特任研究員 若泉敏

IT化・ロボット化による仕事の変化

子どもたちの65%は、大学卒業後、今は存在していない職業に就き(※1)、今後10〜20 年程度で、約 47%の仕事が自動化される可能性が高い(※2)という衝撃的な予測が米英の 研究者から発表されています。2015年は人工知能元年と言われていますが、おりしも今年 3月には、「ついに人工知能が銀行員に『内定』IBMワトソン君」(※3)という新聞報道があ りました。三井住友銀行ではビッグデータ分析の技術を活用して、オペレーターの対応業務 にIBMのワトソン(人工知能)を年内にも導入するそうです。

情報化社会の到来が言われたのは 1980年代からでしょうか。20世紀の工業化社会では 大量生産・効率化を目指し、子どもたちに必要な力は暗記力と再現力でした。日本はこれに うまく適合し高度経済成長を達成してきました。知識暗記型の学力試験対応力に、学習塾や 予備校の果たした役割は大きなものがあった、と我々は自負しています。これからも暗記力 と再現力が必要であることは論を待ちません。しかし21世紀の高度情報化社会では、冒頭 でふれたようにIT化・ロボット化などにより、暗記力と再現力の需要は縮小することは明 らかです。

21世紀に求められる必要な力

21世紀は、新しい知識、情報、技術が社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的 に重要性を増す、いわゆる「知識基盤社会」といわれています。この15年間のインターネ ットの普及など社会生活の変化を振り返っても分かるように、知識基盤社会では、変化が激 しく、企業や公共機関だけでなく我々一人ひとりも常に、新しい未知の課題に臨機応変に対 応し、イノベーション(社会的な新しい価値と変革)を創造していかねばならないのです。

この激動する社会の中で子どもたちに求められる力は、「21世紀型の力」すなわち知識 を基盤に自らの言葉で表現し主体的に行動する力であり、想像力や協働力など多様な力な のです。学校教育と学校外教育を通じて身に付けるべき必要な力が変わってきているのだ といえます。  

グローバル化・多極化の中で

一方、社会のグローバル化・多極化の流れは、我われが予想するよりもはるかに速く、 世界の変化がダイレクトに日本に多大な影響を与える時代になっています。この影響につ いては枚挙にいとまがありませんが、企業の採用に関して次のような数字があります。

【2万人、10万人、100万人、200万人】この人数が示す対象はいったい何でしょうか?

これは【日本人、米国人、インド人、中国人】の人数です。東証一部上場のグローバル 企業が百数十人の社員を採用するときに、「ハーバード大学卒業レベルの専門知識を有し、 英語と中国語がネイティブ同様に話せる」との条件を出した場合の対象者だそうです。日本 人以外は英語か中国語のどちらかはすでにネイティブスピーカーです。グローバル社会の 進展の中で日本のこれからの子どもたちが社会に出るときは、親世代とは全く異なり、世界 の人々を相手にして、自らの実力を高めていかねばならない現実を痛感します。

この人材獲得競争は10年後には少なくともアジア全域の青年が対象になります。このよ うな産業構造や社会の変化を見据えて、現在の親たちは、わが子の教育に手を打っていかね ばならないのです。  

大学入試が変わり、大学と高校の一体的教育改革が始まる

2014年 12月の中央教育審議会答申において 2019年度からの高等学校基礎学力テスト、 2020年度からの大学入学希望者学力評価テスト(いずれも仮称)の導入が発表されました。 2015年度入学の中学1年生から大学入試センター試験はなくなり、「思考力・判断力・表現 力」を中心に評価する新テストが実施されます。これまでの試験と異なる点は、個々の教科・ 科目の範囲にとどまらず、複数の教科・科目を教科横断的・総合的に組み合わせて出題する、 「合教科・科目型の問題」となることです。テスト問題の詳細は今後つめていくようですが、 2017年度にはプレテストが実施される模様ですし、これに伴う高校の指導内容や方法も変 わり「課題の発見と解決に向けた生徒の主体的・協働的な学習」を今年度から順次実施して いくことが明らかになっています。

以上は新聞報道でも目にしたことと思いますが、私が注目するのは中教審答申の冒頭で、 「これからの子どもたちが、十分な知識と技能を身に付け、十分な思考力・判断力・表現力 を磨き、主体性をもって多様な人々と協働すること」を教育目標としている点です。従来か らの【知識と技能】の習得はもちろん、【思考力・判断力・表現力】の育成も20世紀末から 取り上げられた教育目標です。これらに加えて【主体性・多様性・協働性】が掲げられてい ます。グローバル社会を生き抜く子どもたちが身に付けるべき重要な資質なのです。

 さて、以上に見てきた子どもたちを取り巻く大きな社会変動の中で、10年後を見据えて 親はわが子に、具体的にどのようなことをしていけばよいのでしょうか?

親はわが子に何ができるのか?英語の習得

あらゆる情報と物・人の動きが世界全体で結びつきを深めていくグローバル社会におい て、英語は必須の言語ツールとなります。俗に「2,000時間をかければ、英語は身につく」 と言われています。2,000時間の根拠はわかりませんが、小学1年から毎日1時間を6年間 かけて、中学 1年なら毎日 2時間を 3年間かけて達成する時間です。これは 1日も休むこ となく英語を意識的に学び続けることがミソで、2,000時間経過後も、英語に興味を持つ人 の英語力は、習得のスピードが速くなってネイティブに近づいていくでしょう。2,000時間 は一つの目安として親が子どもに働きかけるツールになります。注意すべきは「聞く、話す、 読む、書く」をバランスよく、というのは中学の半ば以降のこと。小学生は特に「書く」を 急がないことです。もう一つは英語を使う=「話す」場面を具体的に見つけてくることです。 英語教室のネイティブ講師以外の外国人と関わる機会があると、外国の文化や習慣にも興 味を持ちインターネットで調べたりして英語習得の意欲が高まっていきます。

要は、わが子が英語の習得をコンスタントに続けていくような仕掛けを親がセッティン グし、習得の経過に寄り添い、習得する様子を見つめ続けて変化を認め、進展ぶりをわが子 に伝える(ほめる)ことです。  

わが子に「言わないこと」と「寄り添うこと」

わが子に「宿題はやったの?」と問い質したり「勉強しなさい!」と言ったりしないことも 重要です。「子どもの自主性に任せなさい」と言っているのではありません。子どもは「や らなきゃー」と思っていますが「やれない」のです。この状態の子どもに寄り添うことをし ないで「うちの子は言わないと宿題やらないから」とガミガミしつこく言う親はなんと多い ことでしょう。この姿は親の自己満足でしかなく「ちゃんと(親の)務めを果たして言って やっているのだから、成績が悪いのはオマエのせいだ」と責任転嫁をしているだけです。  

宿題をしない子どもを、どうするか?

それでは親が言うまで【宿題をしない子】には、一体どう対処したらいいのでしょうか? 一例を挙げましょう。宿題は必ずメモを取って帰って来ているはずです。そこで親は、「宿 題やったの?」と聞かないで、「メモを見せてごらん」と言います。そして「宿題をやり終 えたら親に見せなさい」と言います。この場面では「見せてね」と「お願いする」のではなく、穏やかに、静かな口調で容赦のない命令をします。宿題を完了して親に見せに来るまで寝か せません。<宿題をどうしてもやり遂げさせたい親>は、一歩も引かない強固な覚悟と態度 を示す必要があります。親がわが子に、穏やか且つ真剣に向き合っていることがわかると、 子どもはやれるものです。ただし、どこかの機会に【宿題】が出される意味と効果について 子どもが納得するように話をすることが必要です。子どもの状態によっては様々な対応が 考えられます。1本道ではないことに留意してください。

<宿題やったの?と問い質すだけの親>は、わが子の心に苛立ちを芽生えさせ、意欲を減退 させ、子の反抗心を強化させていきます。そしてそのうち「馬の耳に念仏」になるのです。 <宿題をやるかどうかは本人次第だから、何も言わない親>はどうでしょう。子どもによる のです。進んで勉強し成績を維持する子はそれでいい。問題なのは何も言わない結果、勉強 をしない子どもです。生涯学習時代において、勉強をし続けない人は社会の変化についてい けなくなることを意味します。わが子の幸せを願わない親はいません。私は子どもに勉強す る機会を最大限に与え整え、可能性を探り支援する、そのような親でありたいと考えます。  

勉強をしない子どもに、どう立ち向かうか?

【勉強しない子ども】には、どのように対応するのがよいのでしょうか? まず、 「子どもはどうして勉強をしなければならないのか?」を親自身が自問自答してください。 「オマエの将来のため」は説得力がありません。「よい大学、よい会社に入れなくなるから」 も古いです。競争相手は日本人だけではありませんし、世界の大学を視野に入れて進学を考 える時代です。また、最近の一流企業は大学のブランド名だけで採用するほど甘くはありま せん。結局「その都度の試験でいい成績をとるため」に落ち着きそうですが、それでは今ま でと変わらない「イヤイヤ勉強」になり、モチベーションが上がりません。外から与えられ た動機ではなく、内心から沸き起こる意志が必要です。

私は5項目を挙げて子どもに話しますが、そのうちの4項目を簡単に記します。
(1)自分の人生を(親も含めた)他人に頼らないで自分の力で切り開くため、
(2)誰かのために何かができるような、他の人の役に立つ人間になるため、
(3)生涯学び続けるためのスキル(自学習と協働学習の方法)を得るため、
(4)希望する○○の仕事につくための試験に合格するため。

以上の「勉強する意義」を理解した塾生の一人は、その後見違えるくらいに勉強をする ようになり一橋大学に合格しました。しばらくして教室に顔を見せに来た時に「小学6年の 時、先生にしていただいた話は今でもはっきり覚えています。」と言っていました。

教科学習の方法(自力習得のやり方)をつかませる

それぞれの教科で、何を、いつ、どのように勉強したらよいのでしょうか?

自力で習得する手順や方法を知らないために【勉強しない子】がいます。この場合は学校 や塾の先生に尋ねさせましょう。そして聞いて分かったこと、具体的な勉強方法や手順を、 親にわかるように説明させます。子どもは嫌がりますが、親に説明できてこそ実行できるの です。「話さない」のは「話せないくらい実感がない」つまり「実行できない」ことを意味 します。

勉強の仕方がわかっても勉強しない子の中には、特定の教科の学習になると「どうしても 頭の中が白くなってしまう」とか「真面目に取り組むのだが繋がりがわからなくなり混乱し て頭が痛くなる」という子どもがいます。このような場合には、全ての教科に力を注ぐこと はあきらめた方がよいこともあります。2020年度の大学入試では、国は生徒の特徴ある資 質・能力が測れるような【多様な評価軸での選抜】を考えています。このような選抜の流れ も時代の要請なのです。したがって、好きな教科・科目を一目置かれるくらいに伸ばしてお くことは、大学進学に有利に働く可能性があります。

どうしても教科の勉強に身が入らない子もいます。その場合は、たとえ学校の勉強以外で あっても、もう1ランク上の目標を定めて、自分の好きなことに徹底的に打ち込ませるよう に向けることです。好きなことに本気で打ち込める子ならば、どこかで壁にぶつかった時に、 本を読み、先輩や成功した人の話を聞き、自分の頭で考えて(つまり勉強をして)乗り越え なければならないことに気が付くでしょう。

親の思うように動いてくれないわが子を不憫に思い不幸な事と考える原因は、通常、わが 子が好きなことに打ち込むことをどうしても受け入れられない、偏った親の価値観や考え 方にあるのです。親自身がわが子の生き方の多様性を認め、主体的に行動するわが子に寄り 添い、わが子と協働して実現に向かうことは、今日的な家族の在りかたといえるでしょう。  

社会情動的スキルと学びに向かう力

最後に、グローバル社会を生き抜くわが子に対し10年後を見据え、親は家庭教育を通し て、どのような態度や心情、能力を育んでいけばよいのか考えておきます。

OECD(経済協力開発機構)は2015年3月「社会情動的スキルのパワー」に関する世界調 査の分析結果(※4)を公表しました。それによると【忍耐力や自己制御・社交性や思いやり・ 自尊心や楽観主義】などの「社会情動的スキル」(※5)が高い子どもは、従来の「学力向上」 などの「認知スキル」に効果的な影響を与えるが、子どものころの「認知スキル」が高いか らといって、その後の「社会情動的スキル」を高くするとはいえない、という注目に値する 報告をしました。  

将来の変化に対応する持続可能な認知スキルや学力を獲得するには、認知面の学力向上 に投資するよりも、【忍耐力や思いやり、自信や楽観主義】などの社会情動的スキルを育む ことに投資をする方がより効果が上がる(社会的地位と経済的優位性の獲得可能性が高い) ということです。そして「認知スキル」に強い影響を与える以上、「社会情動的スキル」は、 早期投資つまり幼児期からの育成が重要だ、と結論付けています。

また、ベネッセ教育総合研究所の、「幼児期に必要な『学びに向かう力』」(※6)によると、 幼児期における基本的な「生活習慣」及び協調性・自己抑制など「学びに向かう力」の育成 は、小学校以降の「文字・数・思考の力」をより高く育てることが明らかとなった、と伝え、 保護者が子どもと一緒に行う知的なやり取りや養育態度は、「学びに向かう力」や「文字・ 数・思考の力」の育成にプラスに影響することが明らかになった、と報告しています。

ここで「生活習慣」とは、次の7項目です。
1)、夜、決まった時間に寝ることができる
2)、家で遊んだ後、片付けができる
3)、食事が終わるまで、席に座っていられる
4)、好き嫌いなく食事ができる
5)、1人でトイレの排泄、後始末ができる
6)、脱いだ服を自分でたためる
7)、まわりの人に「おはよう」「さようなら」「ありがとう」などの挨拶やお礼を言える

「学びに向かう力」は、【好奇心・協調性・自己統制・自己主張・がんばる力】の5領域

「保護者の養育態度」は、【子どもの意欲を尊重したり、子どもが自分で考えられるよう 促したりすること、言葉やもので知的なやりとり遊びをすること】があげられています。

このような生活習慣や学びに向かう力、保護者の養育態度は、何も幼児期だけに当てはま るものではありません。幼児期の素直でかわいい姿は見せなくなっていますが、小・中学生 になって反抗期を迎えた子どもにも必要なことです。むしろ挑むべき課題が明確になって くるこの時期こそ、学びに向かう力の存否が問われるでしょう。今からでも遅くありません。

わが子に寄り添いながら、成長を支えていく

 わが子に対して親がなすべき最も重要なことは、基礎学力の伸長を図るとともに、学びに 向かう力=社会情動的スキルを形成し、若竹のようにしなやかで強靭(レジリエント)な人 間力を備えていけるよう、子どもに寄り添いながら成長を支えていくことです。

 学びに向かう力の中核は自己肯定感・自己有用感です。子どもが一番嫌う兄弟との比較や 学校の友達との偏差値比較は自己肯定感を弱めるものです。相対的な位置付けで評価する のではなく、絶対的な伸長、すなわち昨日の自分よりも今日の自分が成長したという自覚を 本人が持ち、親が認めること、この連続が自己肯定感を高めるのです。

 また、多様な人と触れ合う機会が多くあり、他人と協働して何かをやり遂げた喜びの体験 が豊かにあると、脳に快感を与え、自己有用感を強く持つことができます。少年期のわが子 に対しては、幼児期とは違い、子どもの心に寄り添いながら親子の話し合いを通して納得さ せることができます。親の方も、子と関わる力などの人間力が試されるといえるでしょう。 そうです。よりよく生きる子どもにするには、親の生き方が問われるのです。

 親の価値観の一方的な押し付け、強権的指示、脅し、ウソ、ごまかし、イライラや不安、 過剰な反応、威かくや威圧、怒声、暴言や暴力、無視や放任、過度の保護など、「親の愛情 やしつけ」の名の下で行う、これらの行為に子どもは敏感です。反抗しない場合も見せかけ の従順さを見せることがあります。いずれにしても、親がするこれらの偏屈で感情に任せた 養育態度は、10年後の意義ある社会活動に向かう子どもを委縮させ、生きる力を減退させるものです。

そうではなく、わが子を独立した個人として尊重し、話を尽くして子どもを受け入れ、親 子のよりよい関係を構築していく努力を積み上げて、「社会情動的スキル」と言われる傾向 や態度、資質などをより向上させていくことこそ、10年後を見据えて、親が今、子どもに しておかねばならないことなのです。

これからの社会がどのように変化しようとも、柔軟に生き抜いていける力を見定め、わが 子が将来に向かって夢を描き、その実現に向けて努力し、自信にあふれた、実り多い、幸福 な人生を送れるように、親の力を発揮し子を支えていただきたいと願っています。

※1 キャシー・デビットソン 米ニューヨーク市立大学大学院センター教授 2011年8月ニューヨークタイムズ
※2マイケル・A・オズボーン英オックスフォード大学准教授 2013年「未来の雇用」
※3 日経産業新聞 2015年3月22日 朝刊
※4OECD(経済協力開発機構)本部の2015年3月10日付け公式発表
「社会情動的スキルのパワー」に関する世界9ヵ国縦断調査分析結果
※5「社会情動的スキル」とは、人の一生を通じて社会・経済的成果に重要な影響を与えるような個人の能力で、 一貫して思考・感情・行動のパターンに発現するものをいう。 ※6 ベネッセ教育総合研究所が2012年〜2014年に年少児〜小学1年生の約5,000人の親に縦断調査した結果 「幼児期に必要な『学びに向かう力』」による(「幼児期に必要な『学び向かう力』」よる( http://berd.benesse.jp/)